ドイツでの雇用に関して:
雇用の際のキーポイントは次の5つにまとめることができると思います。
1) 誠実性(これが欠けていると、2) 以下から 5) までがどんなに長けていてもお話になりません)
2) コミュニケーション能力(これが欠けていると仕事になりません)
3) 協調性(会社は組織で動きますので、欠かすことが出来ないものです)
4) 自主性(自身から物事に取り組む姿勢はとても大事です)
5) チャレンジ精神(仕事への熱意も欠かすことができないものです)
他にもまだありますし、優先順位は人によって違うかもしれません。ですが、どんなに 2)~5) が優れていても、例えば組織を裏切るような行為が起こるようではどんなに素晴らしい仕事ができても全く意味がありませんので、誠実性をトップに上げています。
そして、4) の主体性や 5) のチャレンジ精神、あるいは器用さや仕事能力も、勿論あればある程良いですが、2) のコミュニケーション能力や、3) の協調性がないと組織では機能しません。また、チャレンジ精神や仕事処理能力も、自社に対する熱意がなければ意味がありません。
新規雇用において最も大切なことは、優秀な人を見つけることも大事ですが、それ以上に数十人に1人はいるとされているトラブルメーカーを採用してしまわないことです。
もしそういう人が入社した場合、上司や他の社員にかかる迷惑だけではなく、そこで失われてしまう会社全体の労働生産性や士気の低下はとても大きいばかりではなく、取引先や顧客にまでその迷惑は及びかねません。
多少時間がかかっても、技能や仕事は入社後に身に付けることが出来ますので、仕事には優れていても人間的に問題のありそうな人を雇用するよりも、仕事の経験が少なくても人間的に良い人を雇用する方がはるかに良いという結論になります。
そこで大事なのが応募者の志願動機、過去の転職理由、自社で働くビジョンや応募の背景となりますので、その点を面接の際に詳しく確かめましょう。
見分ける最も簡単な方法は、一度軽く相手を怒らせてみることです。そんなことは出来ないと仰るかもしれませんが、それで将来の自社のトラブルを防ぐことができるのであれば安いものです。
但しその場合は、後で変な噂が広まらないように、お土産なども用意しておき、最後に丁重に謝ることが必要です。
そこまでは出来ないという場合でも、次のような心理テストによってかなりの判断ができます。
性格心理テスト:
http://www.ataru-sinri.com/seikaku.html
さらにもっと簡単な方法は、インタビューの時に過去に勤めた各社で…:
1) 自分がしていた仕事の内容
2) どんなことがつまらなく、どんなことにやりがいを感じたか
3) 社長さんや同僚、会社全体の雰囲気はどうであったか
4) 退職の理由と新しい職場に移って感じたこと
などをなるべく詳しく尋ねて下さい。
出てくる答えである程度のことをつかめることが多いです。
ドイツでは転職が当たり前で、過去にいくつもの会社に勤めていることが多いものの、辞めるには必ず理由があります。その理由が本人にあるのか、あるいは上昇志向から来るものなのか、単に不遇であったのかが分かることもあります。
日本人以外の場合、例えば30歳代後半でも既に7、8社転職している人もざらにいます。逆に例えばメルセデスベンツ(特に工場)に親子孫三代勤める、つまり一生涯一社のみに務めるドイツ人もいます。
いずれにしても、「一度あればニ度ある…」の原則は当てはまり、転職が多い人はいずれか早い時期にいなくなる可能性は高いです。
よって、過去の転職回数が少なければ少ない程、離職率は下がると言えます。
尚、人材募集の広告には、本人に責任のない年齢や性別制限等を設けないで下さい。差別とみなされます。制限を設けずに募集する必要があります。
応募してきた人たちの中から選ぶことは当然できますが、募集の段階で制限を設けてしまうと強いバッシングに遭うことがあるだけではなく、運が悪いと当局からも注意が入ることがあります。
募集対象、応募が日本人ではなく西洋人の場合は次の2点を注意してください。
1) 相手が言うことを間引いて聞く。西洋では小学生の頃から自己主張を叩き込まれます。協調性を求められる日本人とは真逆です。よって、自己アピールが上手いので、相手の申し出をそのまま受け取ると後で後悔をします。
簡単な例で言うと、例えば語学のレベルの場合、日本人ならある程度できても「少し出来ます」なのに対して、ドイツでは「問題なくできます」となります。(但しこれはあくまでも一般論で、中には稀に日本人のようにシャイで控えめな人もいます)
2) 履歴書(Lebenslauf)上の転職の多さはこちらでは当たり前です。ですが、転職の理由は大事なことですので、各社での退社の理由をそれとなく確認する必要はあります。
ドイツでは退職するとその会社の社長さんから手紙をもらう習慣になっています。その手紙を次の就職の際に提出します。もしそれがない場合はどういう辞め方をしたのかを疑う必要があります。
また、その手紙の中の行間にその人がどんな人でどういう仕事をしたかが隠されていることがよくありますので、それらの手紙の内容は、その人がどんな人であるかを判断するのに貴重なものとなります。
また、ある程度の年齢にも関わらずに独身の場合、普通一般の既婚者よりは統計上リスクがある可能性があります。個性が強い等です。但し、ただ単にご縁がなくて結婚しなかっただけという人もいますので、見極めが大切です。
今日では人材紹介会社を通してスタッフを探すことが流行っていますが、お給与の数か月分の紹介手数料がかかります。在ドイツ日本商工会議所や、デュッセルドルフ大学(*1)に頼る、あるいはオーソドックスな一般広告に頼っても十分に人材を見つけることが可能です。
*1 毎年数百人もの学生が、デュッセルドルフ大学の日本科に入学します。その内の多くは卒業前に挫折してしまいますが、残った学生は日本に1年間留学するなどして、日本語も流暢であれば親日、日本ファンであることが多いので、そういった学生を雇用することは日本企業にとっても有利です。